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【ラティス構造】3Dプリンターだから造れる

【ラティス構造】軽量化と高剛性

ラティス構造(格子構造)の主なメリットは、「大幅な軽量化」と「高強度」の並立です。中身を空洞化(中空)にすることで材料費と重量を削減しつつ、格子状のビームで全体を支えるため、構造的剛性を維持できます。また、衝撃吸収、熱効率(放熱・熱交換)、通気性の向上など、熱管理や軽量性が求められる航空宇宙・自動車部品などで特に優位性を発揮します。

【メリット】多くの利点

■ 大幅な軽量化と強度・剛性の確保

 中身の詰まったソリッド構造と比較し、材料を減らしつつ十分な構造強度を保持できる。

 製品の耐久性を維持したまま重量を削減できる。

■ 熱管理・流体特性

 熱交換器やヒートシンク(放熱・熱交換)として、大きな表面積を活かした高い熱管理能力

 を発揮する。

 流体を通しやすいため、フィルターなどの用途にも適している。

■ 衝撃吸収性と振動減衰

 格子が衝撃エネルギーを分散、優れた衝撃吸収性を持ち、防振・防音効果も期待できる。

■ 機能の自由度

 TPMS(三重周期極小曲面)など、特定の目的(強度向上、軽量化優先など)に合わせた

 多様な形状設計が可能。

■ 用途の拡大

 金属3Dプリンターとの相性が良く、航空宇宙、自動車、医療用装具(人工骨)、熱交換器

 などの分野で応用されている。 

■ デザイン性

 園芸用やインテリアなどのラティスフェンス(格子フェンス)においても、

 軽量、通気性、目隠し、おしゃれな外観といったメリットがあります。 

 

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3Dプリンターの技術進化、そして三次元の設計自由度を極限まで活かした最先端の設計手法が「ラティス構造(Lattice Structure)」です。

 

ラティス構造とは、格子状や網目状に細い立体的な要素を規則正しく、あるいは不規則に組み合わせた中空の「ジャングルジム」のような内部構造のことです。従来の工法(削り出しや金型成形)では、内部をこのように微細な空洞だらけにすることは物理的に不可能でしたが、層を積み上げて形を作る3Dプリンター(積層造形)の登場によって初めて量産・実用化が可能になりました。

 

ラティス構造は、単なる「肉抜き(軽量化)」の技術に留まりません。設計(トポロジー最適化)や材料(樹脂、エラストマー、金属)との組み合わせによって、「超軽量なのに強い」「優れた衝撃吸収性(クッション性)を持つ」「熱交換効率が劇的に高い」といった、これまでの単一素材ではあり得なかった革新的な機能(メタマテリアル特性)を製品に付与できます。

 

3Dプリンターによるラティス構造の具体的な導入事例について、スポーツ用品、自動車・モータースポーツ、医療、製造業の試験具などの分野で活用される。

 

消費者の体験を変える「スポーツ・アパレル製品」のクッション性革新

現在、一般の消費者が最も身近にラティス構造を体験できるのが、高機能なスポーツギアの分野です。ここでは主に、柔軟性と反発力を持つエラストマーやTPU(熱可塑性ポリウレタン)などの「樹脂系ゴム材料」を用いたラティス構造が世界中で大ヒット商品を生み出しています。

 

1. 高機能ランニングシューズの「3Dプリント・ラティスミッドソール」

アディダス(adidas)の「4D」シリーズに代表される、次世代ランニングシューズのソール(靴底)の事例です。

従来のランニングシューズのミッドソール(クッション部分)には、EVAなどの発泡スポンジ樹脂が使われていました。スポンジは軽くて柔らかいものの、「一方向(真下)への衝撃は吸収するが、走る・曲がるといった複雑な足を動かす際のアシスト(推進力への変換)が均一になってしまう」という限界がありました。

 

3Dプリンターを用いることで、足裏の部位(かかと、土踏まず、つま先など)によって、ラティスの格子の太さや密度、角度をシームレスに変化させたミッドソールを一発で成形します。

例えば、着地時にお大きな衝撃がかかる「かかと」部分は、格子をあえて斜めに設計することで、下向きの衝撃を「前方向への推進力」へと物理的に変換します。逆に「つま先」部分は格子を細く、高密度にすることで、地面を蹴り出す力をロスなく伝える硬さを持たせます。このように、1つの部品でありながら、場所によって「柔らかさ」と「反発性」を完全にコントロールした、従来のスポンジでは絶対に不可能だった個別最適化クッションが実現しています。

 

2. アメリカンフットボール用ヘルメットの「衝撃吸収ライナー」

コンタクトスポーツにおける選手の脳震盪(のうしんとう)や頭部負傷を防ぐための、ヘルメット内部の保護クッションの事例です。

NFL(米プロフットボールリーグ)の選手が使用するRiddell(リデル)社のヘルメットには、Carbon社の3Dプリント技術を用いたTPU製ラティスライナーが採用されています。

従来のウレタンフォーム(泡スポンジ)は、一定以上の強い衝撃を受けるとクッションが潰れきってしまい(底付き現象)、それ以上の衝撃を吸収できずに頭部に深刻なダメージを与えていました。

ラティス構造は、格子が「段階的にたわむ」ように設計できるため、軽い衝撃から命に関わるような猛烈な衝撃まで、全領域のエネルギーを効率よく分散・吸収します。さらに、選手一人ひとりの頭部3Dスキャンデータに合わせてラティスの形状を特注化(パーソナライズ)することで、フィット感を極限まで高め、安全性を飛躍的に向上させています。また、内部がスカスカの中空構造であるため、「圧倒的に蒸れにくい(通気性が良い)」という実用上の大きなメリットも生み出しています。

 

モータースポーツ・EVにおける「極限の軽量化と熱管理」

自動車、特にEV(電気自動車)やレーシングカーの分野では、金属(チタン、アルミニウムなど)や高強度プラスチックを用いたラティス構造が、燃費・航続距離の向上、そして熱対策の切り札として使われています。

 

3. スーパーカー・レーシングカーの「一体型超軽量バケットシート」

車体の軽量化がそのままタイムに直結するモータースポーツにおいて、内装部品のラティス化が進んでいます。

ポルシェなどのハイエンドスポーツカーにおいて、ドライバーが座るバケットシートのクッション部にラティス構造が導入されています。

従来のウレタンと本革でできた重いシートに代わり、シートの中身を3Dプリントされたエラストマー製のラティス構造に置き換えることで、シート単体で数キログラムの軽量化を達成。さらに、レース中の激しいG(遠心力)がかかる状況でも、ドライバーの体型に合わせてラティスの硬さを部分最適化しているため、身体が全くブレない究極のホールド感を提供します。副次的な効果として、長時間の走行でも背中や太ももが全く蒸れないため、ドライバーの疲労軽減にも貢献しています。

 

4. 次世代EV用・電子機器用の「超高効率ラティス・熱交換器(ヒートシンク)」

EVのパワー半導体やバッテリー、高出力モーターは、稼働時に莫大な熱を発するため、効率的な冷却(サーマルマネジメント)が必須です。

冷却水や空気が通るヒートシンク(放熱板)の内部に、金属3Dプリンターで「ジャイロイド(Gyroid)」と呼ばれる数理的なラティス構造を敷き詰める事例です。

熱交換器の性能は、「いかに限られた体積の中で、流体(水や空気)が触れる面積(表面積)を大きくできるか」で決まります。ジャイロイドラティス構造は、内部が無限に続く滑らかな曲面の壁で仕切られており、従来のストレートなフィン構造に比べて数倍の表面積を確保できます。さらに、流体が格子を通り抜ける際に適度な「乱流」が発生するため、熱が効率よく水に移動します。これにより、従来の削り出しヒートシンクに比べ、冷却性能を30%以上向上させながら、部品サイズを半分に小型化することに成功しています。

 

医療・バイオ分野における「骨と結合するインプラント」

医療分野におけるラティス構造の活用は、患者の身体的な回復スピードを劇的に早める生体医療イノベーションとなっています。

 

5. 整形外科における「人工関節・チタン製骨代替インプラント」

事故や病気で失われた大腿骨の関節や、脊椎(せきつい)のケージ(固定具)を体内に埋め込むインプラントの事例です。

従来の金属塊(ソリッド)のチタンインプラントは、人間の本物の骨に比べて「硬すぎる(ヤング率が高すぎる)」という問題がありました。インプラントが硬すぎると、周囲の本物の骨に適切な負荷がかからなくなり、人間の骨の細胞が「ここは自分が頑張らなくていい場所だ」と判断して逆に退化(骨吸収)してしまう現象が起きていました。また、金属の表面が滑らかなため、本物の骨と完全になじむ(結合する)までに長い時間がかかっていました。

チタン3Dプリンターを用いて、インプラントの内部や表面を人間の骨の内部(海綿骨)と全く同じような、微細な空孔を持つラティス構造で製造します。

格子状に中空にすることで、チタンという硬い金属の「マクロな硬さ」を、人間の骨とほぼ同じ柔らかさ(剛性)にまで物理的に引き下げることが可能になり、骨の退化を防ぎます。さらに、ラティスの隙間(数百微米の穴)に、手術後、患者自身の本物の骨細胞や血管がじわじわと入り込んで成長(骨インブロース)します。これにより、インプラントと患者の骨が数ヶ月で「生物学的に完全に一体化」し、外れるリスクが極めて低い、極めて頑丈な治療が可能になりました。

 

製造業の現場における「軽量・高剛性な試験具・治具」

工場の自動化(ロボット導入)や製品の耐久試験を行う現場でも、プラスチック樹脂を用いたラティス構造が実務を支えています。

 

6. 自動車・精密機械の試験用「カーボン樹脂ラティス固定治具」

新製品の耐久振動試験や、ロボットアームの先端に取り付ける部品(ハンド)の事例です。

製品を固定して数百万回揺らす試験を行う際、固定するための治具(試験具)が必要です。これが重いと試験機に余計な負荷がかかり、正確なデータが取れません。

外側は頑丈なシェル(殻)で覆い、内部を樹脂のハニカムやラティス構造で肉抜きした試験具を3Dプリントします。材料にカーボンファイバー混入ナイロン(PA12-CF)などを使用すれば、金属(アルミなど)と同等のカチカチの剛性を保ちながら、中身がスカスカなため重量を70%以上削減できます。これにより、試験機の正確なデータ測定が可能になり、ロボットアームに装着した際も動作速度(タクトタイム)を限界まで高めることができます。

 

3Dプリンター×ラティス構造がもたらす本質的価値

これらの事例から分かるように、3Dプリンターとラティス構造の組み合わせがもたらす本質的なバリューは以下の3点に集約されます。

 

「材料の特性」を形状で書き換える(メタマテリアル):

カチカチのプラスチックであっても、極細のラティスにすれば「バネ」のようにしなやかになります。逆に、チタンのような超硬質金属であっても、骨のように「柔らかい金属」に変えることができます。素材そのものを変えることなく、形状のデザインだけで物理的な特性をコントロールできるのが最大の強みです。

 

極限の「軽量化」と「高強度」の両立:

自然界の竹や骨がそうであるように、必要な部分にだけ格子を配置し、不要な部分は中空にすることで、物質の消費量を最小限に抑えながら、構造物としての強度を最大化(軽量高剛性)できます。これは輸送コストや環境負荷の削減に直結します。

 

多機能の「一体統合」:

「構造を支える骨組み」でありながら、同時に「ショックを吸収するクッション」であり、さらに「風や水を通す冷却路」でもあるという、複数の機能を1つのパーツの中に積層して持たせることができます。

 

ラティス構造は、3Dプリンターという「層を積み重ねてカタチを作る工法」がなければ、単なる机上の空論(CADの中だけのデータ)で終わっていた技術です。アディダスのシューズから、EVの冷却器、そして体内に埋め込む人工骨にいたるまで、目に見える外観だけでなく「製品の内部の空間をデザインする」という新しいモノづくりの概念を提示したコア技術として、ラティス構造はこれからの持続可能でハイパフォーマンスな産業を強力に牽引しています。